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退職金規定(退職金規程)の具体的な作成・見直し方法


退職金規定(退職金規程)を変更する際に留意すべき点とは?

退職金規定(退職金規程)に関する労働条件の変更については、法律で定められているわけではありません。原則として労使間に任されています。労使間の意思を反映して、合意形成がなされるのが望ましいとされています。その合意形成のかたちとして退職金規定(退職金規程)があるわけです。
現在ある退職金規定(退職金規程)を変更する際には、手順を守りましょう。手順を守らずに事業主が一方的に退職金規定(退職金規程)を変更すると、間違いなくトラブルになります。このようなトラブルについて、訴訟に持ち込まれたりすると事業主は非常に不利です。きちんと順序を守って進めていきましょう。

それではケース別に分けて対応策をみていきます。

@貴社に労働組合がない場合
労働組合がない場合には、従業員に従業員代表を選出してもらい、その代表者と交渉します。この従業員代表者は従業員の過半数から支持を受けていることが要件になります。

A労働組合がある場合
労働組合が同一事業場の従業員の3/4以上で組織されている場合には、その労働組合と締結した労働協約の効力は非組合員にも及びます。したがって、基本的に当該事業所のすべての従業員と契約を締結したことになります。
労働組合が従業員の3/4以上で組織されていない場合には、非組合員には労働協約の効力は及びませんが、その場合は、多数で組織する労働組合と労働協約の締結をし、同時に就業規則等を変更して、すべての従業員に関する契約内容の統一を図っておくことが適当といえます。


従業員の同意は必要か?

前述のとおり、基本的には従業員全員の同意は必要ありませんが、中小企業における退職金規定(退職金規程)の変更は、従業員にとって不利益変更になることが多く、十分な労使の合意を図り、できることなら変更に関する従業員全員の同意書を取っておくことをお勧めします。
過去の判例においても、退職金規定(退職金規程)の不利益変更の効力は、同意しない従業員には及ばないとしているのがほとんどだからです。
それゆえ、同意書は全力を尽くして全従業員からもらっておくことが必要と考えます。


では退職金制度をどのように構築すればよいのか?

退職金制度を検討する場合には、次の3点について自社で考え方をまとめておく必要があります。

@そもそも我社に退職金制度が必要なのかどうか?
Aもし必要だとしたら、退職金の支給額に在職中の貢献度を反映させるのかどうか?
B退職金制度については、確定給付型にするのか、確定拠出型にするのか?

この考え方により、次のような退職金制度を選択することになります。

○最終給与比例(基本給連動)方式の退職金制度

<概要>
「退職時基本給×勤続年数対応係数」の計算式で退職金を求める方法

・メリット
導入事例が他と比べて圧倒的に多いため、比較検討しやすい
・デメリット
最終給与で求めるため、退職金が高騰するおそれがある

○定額方式の退職金制度

<概要>
勤続年数により退職金を求める方法 例.勤続20年で400万円

・メリット
労使共にわかりやすくメンテナンスが容易である
・デメリット
ただ単に長く在籍すれば多くもらえ、在職中の貢献度を反映できない

○ポイント方式の退職金制度

<概要>
在職中に累積させたポイントに単価を乗じて求める方法

・メリット
在職中の貢献度を反映することができる
・デメリット
仕組みが複雑で労使共にわかりにくく、メンテナンスが困難である

○キャッシュバランスプランの退職金制度

<概要>
給与の一定割合を社員ごとに拠出し、会社が運用する方法

・メリット
個人勘定により社員の持分が明確になり、在職中の貢献度を反映することができる
・デメリット
運用責任は会社にあり、導入事例もまだまだ少ない

○中退共利用方式の退職金制度

<概要>
職位や等級別に中退共の掛金を設定し、その掛金を会社が拠出する方法

・メリット
在職中の貢献度を反映することができ、確定拠出型であるため、運用責任が会社にない
適格退職年金から移行する事例が多く、比較検討しやすい
・デメリット
活用できるのが中小企業に限定されており、掛金の没収・元本割れのリスクがある

○前払い方式の退職金制度

<概要>
退職金制度を廃止し、給与・賞与に上乗せしてい払う方法

・メリット
現時点で清算でき、リスクとなりうる退職金制度を維持しなくて済む
・デメリット
退職金制度がない会社になってしまう
社会保険・所得税の負担の面で不利になる

○確定拠出金年金(DC)方式の退職金制度

<概要>
会社が掛金を拠出し、従業員の自己責任で運用する年金で支払う方法

・メリット
個人勘定により社員の持分が明確になり、在職中の貢献度を反映することができる
運用責任が会社ではなく従業員であり、退職給付債務が発生しない

・デメリット
60歳まで引き出しができないため、退職金の置き換えにはならない
従業員の投資教育などが大変である


退職金規定(退職金規程)に盛り込んでおくべき項目とは?

退職金規定(退職金規程)に盛り込んでおくべき項目について、多くの中小企業が採用しているのは次のとおりです。

(1)制度の目的
@功労報酬なのか?
A賃金の後払いなのか?
B老後の生活の安定と生活保証なのか?

(2)適用範囲
@就業規則に定める正社員が対象。嘱託やパートタイマー等には適用しない。役員については、別に定める役員役員慰労金規定による。
A○年以上勤務し、次の各号の一に該当して円満退社し、若しくは解雇され、完全に業務の引継ぎを完了した社員に支給する。
(イ)定年退職
(ロ)在職中の死亡
(ハ)自己都合退職
(ニ)役人就任
(ホ)会社都合による退職(移籍等)
(ヘ)会社都合による解雇
(ト)休職期間終了による退職

(3)退職金の算定方法
退職金は、退職時の基本給に別表に定める退職事由、勤続年数に応じた支給率を乗じて算出した額とする。

(4)支給対象除外期間
@試用期間
A休職期間
B産前産後休業期間
C育児・介護休業期間
D定年後再雇用期間
E私傷病休業期間

(5)支給制限
次の各号の一に該当する事由により退職した場合には、原則として退職金は支給しない。
@勤続○年未満で退職した場合
A懲戒解雇された場合

(6)勤続年数の計算方法
@勤続年数は、入社日から退職日(死亡日)までとする。試用期間は勤続期間に含む。
A1年未満の端数月は、6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は切り上げる。
B勤続年数の計算は、正社員として採用された日から退職の日(死亡の場合は死亡した日)までとし、1年未満は1ヶ月につき1年の12分の1を加算し、1ヶ月未満は1ヶ月に繰り上げる。
C1年未満の端数は月割りとし、1ヶ月未満は切り捨てる。

(7)端数計算
@円未満の端数は切り上げる。
A100円未満は切り上げる。

(8)特別功労加算金
在職中、特に功績があったと認められた場合には、退職金の他に功労加算金を支給することがある。

(9)支払いの期日、支払い方法
@退職金は、退職日の翌日から起算し、3ヶ月以内に全額通貨にて支払う。ただし、本人の同意により本人指定の銀行口座(本人名義に限る)へ振込みにより支払うことがある。
A退職金は、原則として退職した日の属する給与計算の給与支給日に支給する。
B退職年金に加入している社員については、退職年金額を一時金に換算し、退職支給額からその額を引いた額を退職一時金として支給する。

(10)債務の弁済
退職者が会社に対して弁済すべき債務がある場合には、本人の同意の元に退職金から弁済額を差し引いて支給する。

(11)死亡時の退職金の支払い
死亡した者の退職金は遺族に支給する。遺族の順位は労働基準法に定める順位とする。

※上記はあくまで貴社の退職金規定(退職金規程)の規定の参考として下さい。
当事務所では上記内容を無断借用した場合の責任は負いかねます。

退職金規定(退職金規程)の雛型、書式

退職金規定(退職金規程)の雛型、書式は次のとおりです。

@退職金規定(退職金規程)(中退共利用確定拠出型【グレード別掛金設定】)→雛形はこちら
A退職金規定(退職金規程)(中退共利用確定拠出型【報酬連動型掛金設定】)→雛形はこちら
B退職金規定(退職金規程)(中退共利用確定拠出型【定額掛金設定】)→雛形はこちら
C退職金規定(退職金規程)(ポイント制【勤続ポイント+等級ポイント】)→雛形はこちら
D退職金規定(退職金規程)(ポイント制【等級ポイントのみ】)→雛形はこちら

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